DF−DarkFlame−-第四章-−15page
「な、なによ。この炎気」
恵が狼狽した声をあげている。
手遅れだ。
何もかも。
全て思い出してしまった。
忘れていたかった。
本当ならこのまま消えてしまいたかった。
でも、それは出来ない。
智子が僕を健太郎と呼ぶのだからっ!
「食い破れ、僕の牙よ」
縦に横に、斜めに。黒炎が黒炎に引き裂かれていく。
その度毎に悲鳴が聞こえる。
力を注げば注ぐほど、反動もまた大きくなる。
正しくその通りだ。
「こんなっ、なぜ私の炎術が破られるのっ?! 完全に私のほうが格上だったじゃないっ」
半狂乱になりながらも、炎気の密度を操る。
今度は、前後から2重の網を、さらに上からも重なり3重の網で包みこんでくる。
「もう終わりよ、食い尽くしてやる」
まだ気付いてないようだ。
とっくに終っている事に。
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