DF−DarkFlame−-第四章-−15page






「な、なによ。この炎気」

 恵が狼狽した声をあげている。
 手遅れだ。
 何もかも。
 全て思い出してしまった。
 忘れていたかった。
 本当ならこのまま消えてしまいたかった。
 でも、それは出来ない。
 智子が僕を健太郎と呼ぶのだからっ!

「食い破れ、僕の牙よ」

 縦に横に、斜めに。黒炎が黒炎に引き裂かれていく。
 その度毎に悲鳴が聞こえる。
 力を注げば注ぐほど、反動もまた大きくなる。
 正しくその通りだ。

「こんなっ、なぜ私の炎術が破られるのっ?! 完全に私のほうが格上だったじゃないっ」

 半狂乱になりながらも、炎気の密度を操る。
 今度は、前後から2重の網を、さらに上からも重なり3重の網で包みこんでくる。

「もう終わりよ、食い尽くしてやる」

 まだ気付いてないようだ。
 とっくに終っている事に。






© 2013 覚書(赤砂多菜) All right reserved