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四分割の魔女−第八章  −生きた天災−






 決闘の開始を宣言した瞬間に、ドライの姿は消えていた。

 さっそくか。

 フェンはかまわず、ドライがいたはずの場所まで走り抜ける。背後で刃が空を切る気配を感じ取る。
 十分な距離をとって踵を返す。
 ぎこちなくダガーを構えているドライが、苦々しそうな表情でこちらを見ている。
 再びドライの姿が消える。
 しかし、圏が読める。サイドステップと同時に視界にドライの姿が現れる。彼女はすでに狙った位置にフェンがいない事を察知し、振り下ろそうとしたダガーを止める。余程悔しいのか下唇を噛んでいる。
 フェンにとってここまでは予想通りだった。
 最大の武器であった二つの魔法をルールで封じられたドライが、空間転移を中心とした攻撃をしてくる事。そして、武器にダガーを選ぶ事。
 特に重要だったのは後者だった。
 稀代の魔女より武器術を受け継いだのはツヴァイ。主な知識を受け継いだのはフィーア。
 ドライがダガーを武器に選んだのは、純粋にそれが一番軽そうだったからだろう。武器のリーチ等は空間転移が出来る彼女にとってたいして意味がないと踏んだのだ。
 その判断自体は正解だ。武器の素人である彼女にとって重要なのは、素手よりも高い殺傷能力と素手に近い感覚で振り回せる重量。下手に大型や長柄の武器等は無駄なスキを生むだけだ。
 ただし、それはベストではなくベターな選択。彼女には武器の技術はなく、戦闘の知識もない。そして、何よりも大きな問題はドライ自身にその自覚がない事。
 護送屋として、それなりの修羅場をくぐってきたフェンにとって、素手の延長で使われるダガーなど、素手と大差なく。空間転移による攻撃も、ツヴァイとの対ウィザード戦の特訓で研ぎ澄まされた圏により、難なく予測できた。
 まだ、別の武器を工夫して使うなり、ツヴァイの物質化した武器を全てフェンの頭上に転移させ落下させられた方が余程厄介だっだろう。
 すでにダガーを武器に選択した時点でフェンの手の内だった。

 同情はしないぜ。おごったが故の結果だからな。

 そう、なまじ強力な魔法を有していたが為、それを封じられてなお、自らが上位にいると、信じて疑わなかった傲慢さが、今の状況を生んだのだ。

「どうした? 来ないのか?」

 三度目の空間転移もかわされたドライが、忌々しそうにフェンを見る。
 早くも重くなったのか、ダガーを持つ手がたれている。これもドライの誤算の一つだろう。あくまでダガーはツヴァイが出した武器の中で比較的小型で軽量なだけだ。金属の刃を持つそれが『軽い』はずもない。
 ある意味、武器を選択してしまった時点で、ドライは戦術的にフェンに遅れをとっていたと言える。

「このぉ!」

 空間転移なしの真っ直ぐな一撃。フェンはそれを右のリングブレイドでさばく。攻撃を防がれたドライだったが、その口角が上がっているのをフェンは見逃さなかった。
 金属の衝突音がすぐ背後から聞こえた。
 ドライの目が驚愕に見開かれる。恐らく、背後にいるドライも同様の表情だろう。

「知っていたの? いえ、知っていたとしてもなぜ防げるの?!」
「分身が作れるってのは、そもそもオレの目の前にいるお前自身がそうである以上予想はつくさ。後、自分が出来ないから、相手も出来ないと考えるのは危険な考えだな。こちとら、ここに来るまでツヴァイから対ウィザード戦の特訓を受けてたんだ。まさかこんな所で役に立つとは思わなかったけどな」

 フェンは背後のドライの一撃を防いだ、左のリングブレイドをホルダーに納める。それが挑発に映ったのか、ドライの顔が真っ赤に染まる。

「この!」

 空間転移もなく、分身も消えた。徒労に終わる攻撃をドライは飽きる事なく繰り返す。
 完全にフェン優位の状態だが、フェンは気を緩めなかった。むしろ緩める事が出来なかった。
 肌をピリピリと刺すような感覚が強くなっていく。ドライの一振り一振り毎にそれはより強くなっていく。
 いつの間にかドライは薄く笑っていた。その目に狂気を宿しながら。憎悪を周囲に振りまきながら。

「ははっ、死ね。死んで。死んでよ! ヤット!」

 疲労に身体が泳いでも、攻撃の手をとめない。だが、それも限界がある。ドライの足がもつれて転倒した。
 荒い息、噴出す汗、ヨロヨロと立ち上がるその姿は生気を感じさせない。

「……いい」

 ドライが何かを呟いた。
 その声は近くにいたフェンにしか聞こえなかっただろう。

『もういい』

 来たか!!

 フェンは空いている左手でドライを引き寄せ、ドライを下にして共に倒れる。この瞬間の為に左手を空けていたのだ。
 同時に背中に熱い感覚が走る。

「フェンお兄ちゃん!」
「フェン!」

 魔女達の悲鳴が聞こえた。

 たくっ、大げさなんだよ。

 口角が上がるのを止められなかった。背中の痛みはあるが、フェンは倒れたまま、左腕を上げた。その手で親指を立てる。

「お前の反則で、この勝負はオレの勝ちだ。文句はあるか?」

 組み敷かれたドライは顔を背けた。

「……どうして私を。いえ、それ以前になぜ分かったの?」
「追い詰められれば、お前がルールを破る可能性を考えた。正直、そうなった場合いい案が浮かばなかった。フィーアの魔法陣も間に合わないって話だしな。
 だが、そうなるとつじつまがあわない。初めてお前に会った時、フィーアの魔法陣は間に合った。お前はフィーアに魔法陣を作る時間をワザと与えたんだ。つまり、あの時、お前にはオレを殺す気はなかったんだ。憎しみはあってもな。
 話を戻すか。お前がルールを破るとして、どう破るかと考えた。正直勘でしかなかったが、こうすると。自分ごとオレを殺そうとすると思ったんだ。お前が憎しみ狂ったほど愛した男の名で、オレを呼んでいたからな。まぁ、細切れになる可能性もあったが、身代わりとはいえ、愛した男と死ぬのにそんな死に方は嫌だったんだろ?」
「キライよ、あんたなんか……。何もかも見通すところなんてヤットそっくりよ。……本当にヤットの血を引いているのね」

 ドライの肩が震えていた。

「もう一度聞く。……オレの勝ちだな?」

 ドライは背けていた顔を戻し、フェンを真っ直ぐみた。その瞳に宿る狂気は残ったままだが、憎悪の色は消えていた。

「スキにしなさい、ヤット。いえ、フェンだったわね。……少し疲れたわ。あなたが自分の身だけ守っていれば楽になれたのに。私はしばらく眠る事にする」

 ドライの姿が消えた。床にダガーが跳ねる硬い音だけが響いた。

「心臓に悪かったわ」
「まったくだ」
「フェンお兄ちゃん! 大丈夫?」

 三人の魔女がフェンを取り囲む。

「痛っ! まぁ、無事とは言い難いが、なんとかなったな」

 なんとか笑うフェンだったが、アインスの悲鳴がぶち壊す。

「いやー! 背中が真っ赤だよ! ちょ、ちょっと、死んじゃう、死んじゃうよ!」
「落ち着けよ、アインス。そこまで酷い傷じゃない。まぁ、ひょっとしたら縫う必要があるかも知れないけど」
「確かに出血は酷くないな。服が染まる程度で済んでいる。フェン、残念だが、この服はもうだめだぞ」
「そうか、もったいないが、命があっただけ良しとするさ」
「アインスは慌てすぎだけど、二人は落ち着きすぎ! 早く竜車に戻って手当てしましょう」
「おいおい、その前にやる事があるだろう?」

 ツヴァイの肩を借りて立ち上がるフェン。

「ここなら、また来ればいいじゃないか」
「そうよ。傷の手当の方が先よ」

 しかし、フェンは首を横に振った。

「二度手間はゴメンだ」

 フィーアとツヴァイは顔を見合わせてため息をついた。

「分かったわ。封印を解除するわよ。すればいいんでしょ」





 ミスティックコードの檻が崩壊する中、フェンは異常に気付いた。
 今までの魔女達は封印解除によって目を開いたが、ドライにはその兆候が見られない。それどころか、その身体がフラッと傾ぐ。
 フェンは咄嗟に駆けつけようとするが、背中の傷の痛みに身体が強張る。
 その横をツヴァイが駆け抜ける。
 頭から床に倒れこむドライを、ツヴァイは両手を伸ばして飛び込み、頭部を辛うじてキャッチする。

「ツヴァイ! 大丈夫か!」
「大丈夫だ、フェン。あたしもドライもな」

 ツヴァイが破顔して親指を立てる。

「大丈夫って、まだドライは目を覚まさないのか?」

 ツヴァイに上半身を起こされたドライは、ピクリとも動かない。まるで糸の切れた人形。先程まで決闘をしていた相手に思えなかった。

「ライが言っていた通りだよ」
「え?」

 アインスの言葉にフェンは眉を潜める。

 言っていた通り?

 フィーアは額を押さえてため息をついた。

「しばらく眠るって言っていたでしょ。その時が来るまで眠り続けるつもりよ、このコ」
「それで問題ないのか?」
「問題はないわね。……一応」
「?」

 フェンはフィーアの態度に首を傾げる。

「一言ぐらい文句を言ってやりたかった。まぁ、そんなところだ、フェン」
「ビー!」

 ツヴァイはドライの身体を抱き上げる。そして、それをフェンに差し出した。

「ツヴァイ?」
「背中の怪我の事はあるが……。せめて、フェン。あんたが竜車まで運んでやってくれ」
「ビー! このコは――」
「フェンと心中しようとした、か? そんな事は百も承知だ。だが、ドライがここまで狂った、ここまで追い込まれた理由はフィーア。あんたも理解しているだろう?」

 言われてフィーアは反論しようと口を開くが、結局言葉なく唇を噛む。

「理由って?」

 受け取った方がよさそうだと判断したフェンは、ドライの身体を受け取る。その身体は想像以上に軽かった。

「あたし達は稀代の魔女よりいろんなものを受け継いでいるのー。そして、ライはヤットへの想いを最も受け継いじゃったんだと思うー」
「恋慕、愛情。呼び名はなんでもいい。稀代の魔女はヤットを一途に想い続けた。その想いは裏切られたと知れば、狂気と憎悪に染まるほどに強かった。
 ヤットへの想いはあたし達にも引き継がれているけど、ドライに比べれば自制が効き、ヤットの子孫に……その、なんだ、こ、好意を抱く事が出来る程度だ」

 自分で言って照れたのか、ツヴァイは明後日の方向を向く。

「ドライが稀代の魔女の闇を引き継いだ。ある意味、あたし達の正気はそいつに押し付けたモノによって成り立っている。
 ……だから、そんな奴だが、優しくしてやってくれ、フェン」

 フィーアは震えながらそっぽを向いた。納得とそれに反発する心が葛藤しているのだろう。アインスがドライの手に触れて言った。

「フェンお兄ちゃん。ライの事、キライにならないでね。
 ライは、ううん、稀代の魔女はただの人間だったの。とてもとても大きな力があったけど、あっただけで――」
「ああ、分かってるよ」

 フェンはドライの顔を覗き込んだ。軽く寝息を立てているその表情は安らかだった。長い年月の間、どれ程、ヤットを憎み、狂おしく恋焦がれたのだろう。そして、その終焉が眠りの中とは、悲しい結末だ。他に道がなかったとはいえ。

「戻るか」

 フェンは踵を返して、広い通路を戻り始め、魔女達はそれに続いた。





 竜車に戻ったフェン達はドライを寝かせた後、フェンの傷の手当に入った。

「痛いっ! もっと痛くないようにやってくれ!」
「……無茶言わないでよ、フェン」

 結局、背中の傷口は念のために縫う事になった。フィーアが担当したのだが、針を通す度に悲鳴が上がるのでやり辛そうだ。
 ツヴァイは不思議そうに聞く。

「フィーア。麻酔はなかったのか? これだけ薬が充実していたらありそうなものだが」

 フィーアは呆れたようにため息をつく。

「ある事はあるのよ。だけど――」
「た、高いんだよ、麻酔薬は! 痛ぅ!」
「痛い時に麻酔薬を使わなかったら、麻酔薬の意味がないと思うー」

 アインスの率直な意見に、ツヴァイとフィーアが同意して頷く。

「こ、この程度でいちいち使ってられるか。ぐっ、第一、お前等が怪我した時になかったら困るだろう」
「……終わったわよ、フェン」

 自分達の為に我慢しているらしい。そう理解した魔女達の間に微妙な空気が流れる。
 フィーアは無言で余った糸をカミソリで切り、フェンの身体を包帯で巻いていく。

「は、はい。フェンお兄ちゃん」
「おう、ありがとう、アインス」

 フェンは新しい服を受け取り、包帯が巻き終わった後にそれを着た。

「じゃぁ行くか」

 フェンの言葉に魔女達全員が頷く。
 行く先は図書院長室。ドライの封印解除の報告の為。
 図書院は繰り返しの増改築で迷路のようだったが、フェンのグローミングカードにコピーされた地図を頼りに、なんとか院長室に辿り着いた。
 鍵を返すと院長は全てを悟り、その表情を綻ばせた。フェンが図書院についた時とは別人のような表情だった。

「世界の破滅が迫っている事もお忘れなく」

 フィーアが釘を刺すが、院長は気にした様子はない。

「少なくとも、その時まで安心して暮らせます」

 そんな事を口にした。
 院長室を出てすぐツヴァイが呟いた。

「もし、ドライが驚異的な存在じゃなかったら、院長は協力しなかったかも知れないな」

 多くの人々は現在より未来を軽視する。いずれ未来は現在になると誰しも分かっているはずなのに。

「もしなんて言っても仕方ないだろ。少なくともオレ達は前に進んでいる。そう信じろよ」
「そうだよねっ、フェンお兄ちゃん。ライもちゃんと封印から出たし」
「そうだな。あたし達が歩みを止める訳にはいかないしな」

 フェンの笑みに、アインスは朗らかな笑みを返し、ツヴァイは破顔する。
 フィーアはと見ると、薄く微笑んでいる。

「さて、次はついにアビスか?」

 フェンの言葉を聞いて、フィーアは首を横に振る。

「いえ、その前に行くべきところがあるの」
「どこだ?」
「ホープ。言っとくけど地図には載ってないわ」
「ウィンみたいなレジスタンスの拠点とかか?」
「ちょっと違うわね」
「あたし達の家ー」

 アインスの言葉にフェンは目を丸くする。

「家?」

 フィーアはその様子に苦笑する。

「ホープは魔法文明時代の街の名。そして、稀代の魔女が住んでいた街よ」





「さて、ホープとやらに後一歩だと言うのに」

 フェンは双眼鏡から目を離した。
 竜車はすでに止めてある。
 風が巻き上げる砂埃で視界が悪いのは相変わらずだが、それでもはっきりと見えてしまうから困る。

「よりによって、ストームワームに出くわすとはな。いやむしろ、これまでが順調すぎたのか? これはそのツケか? だが、いくらなんでもボッタクリだろう」

 それは生きた天災、そう呼ばれている。全長が標準的な大人の背丈十倍から二十倍にも及ぶ砂漠における最大級の生物。
 その姿は鱗のない蛇。顎を持つミミズ。生息数こそ少ないものの長寿の上、天敵もいない。目は退化している半面振動には敏感で、自身の移動中ですら、人間の子供の足音にすら反応する。
 さらにやっかいな事は群れで行動をする習性がある。小規模なものは数匹程度だが。その巨体故に事前の発見は容易だが、一度彼らの認識範囲に囚われれば確実な死を意味する。

「十匹以上いるよな……」

 数匹でも回れ右をするのが賢明な存在だが、フェンが数に拘るには訳があった。ストームワーム、彼らは獲物の認識を『分担』するのだ。数が増えればそれだけ認識範囲が増加する。
 そして、圏を読めるフェンには、その認識範囲が街一つがすっぽり収まるのが分かってしまった。
 フェンは振り返って、格子窓に声をかける。

「どうする? 迂回して進むにしても、連中の認識範囲を避けるには、かなりの大回りをしなきゃならなくなるが。それも連中がいつまでもあそこで止まっている事が前提の話だ」

 そもそも、ストームワームは一匹のリーダーの行動に全体が付いていくものだが、目の前の群れは止まったままだ。止まっている理由は不明だが、いつ行動を起こしても不思議ではないのだ。そして、移動を始めればピックよりも早い。
 大回りするという事は、その距離の分だけ時間をかけてストームワームの回りを駆け抜けなければならない。認識範囲外は決して安全圏ではない。何かのきっかけにストームワームが動き出した場合、その方向によってはリスクを通り越し命取りとすらなりかねない。

「どうしても行かなきゃダメか? ホープとやらに。マナクラフトなら新しく作ればいいんじゃないのか?」

 フィーアの話では、そこにかつての稀代の魔女の住居と共に研究室があると言う。そこにあるはずのマナクラフトが必要だと言うのだ。
 だが、現代において最高位のマナクラフター、莫大なマナ、そしてマナさえあれば様々な物質を作れる能力。ここまでそろっているのなら、製造に多少時間がかかったとしても引くべきだとフェンの理性が告げていた。
 ただし、それでも彼女達が行くというのなら、リスクを犯す覚悟は出来ていた。もはや一度口にした毒酒ならいっそ飲み干せ、である。
 だが、その覚悟をぶち壊すような声が聞こえた。

「むしろ、あれを突破してはダメなのか?」

 見るとツヴァイがいつの間にか竜車を降りて御者台の近くまで来ていた。格子窓を確認するとフィーアとアインスも竜車を降りようとしている。

 何企んでるんだ? ストームワームをデザートべアより、少し厄介程度に考えてるんじゃないだろうな?

 そう思いつつ、確認しておく。

「……突破できると思うか?」

 フェンはリングブレイドを引き抜いて、目でストームワームと比較する。

「かすり傷程度なら与えられるかもしれないが……。その後はおいしく食べられる結末しか思い浮かばないぞ」
「武器のクラフトならそうだろう。だが、兵器級ならどうだ」
「兵器級?」

 フェンは、ツヴァイの言わんとしている事が理解できず眉を潜めるが、他の二人は理解出来たようだ。

「ご希望は?」
「中近距離攻撃可能で機動力も欲しい。装甲は気にしなくていい。砲弾も随時作るから弾倉も小型でいい。既存の型であるか?」
「あるわよ。と言っても実戦では使われた事がないみたいだけど。設計者はそっち関係の権威。城の二つ名持ちよ。どうする?」

 フィーアがイタズラっぽく笑うと、ツヴァイは破顔した。

「なによりの保証じゃないか! フィーア、早速設計してくれ。アインス、マナを借りるぞ」
「はーい」

 何が始まるのか。魔女達の動きが急に活発になり、眉を潜めるフェン。
 ツヴァイが竜車から少し距離をとった。そして、両手を前に突き出した。その先にミスティックコードの二重円。外と内でゆっくりとであるが双方逆に回っている。
 フィーアが両手を合わせて、広げる。その間に扇状に広がるミスティックコード。それは角ばった動きで蛇行しながらツヴァイの方へと伸びていく。
 アインスはフィーアの隣に並び、眼前で両手を組む。目を閉じて祈るような穏やかな表情。いつもの彼女とは別人かと思わせる。と、彼女の足元にもミスティックコードが生まれ、弧を描きつつ、フィーアのミスティックコードに触れた。
 次の瞬間、あらゆるものが加速。そう表現したくなる光景が展開された。
 フィーアからツヴァイへと向かった蛇行したミスティックコードは一本の太い線となり、ツヴァイの前方で、上下左右へと拡散していく。アインスのマナに満たされ、強い輝きを放つミスティックコードは、予め道筋が定められていたかの如く、枝分かれ、合流し、線を描き、面を描き、立体を形作る。

「……冗談だろ?」

 フェンは呆然と呟く。ミスティックコードによって描かれたその形から、彼女達が何をしようとしているのか、漠然と理解出来てしまった。そして、その描かれた立体の前に立つのはツヴァイ。彼女は物質の魔女。
 彼女が両手の先に展開した二重円の回転が高速になっていく。

「いくぞ、アインス!」
「いつでもー!」

 アインスは目を見開いた。彼女の全身から青白いマナ光が迸り、それはミスティックコードを伝い、ツヴァイの前の立体の内部を満たしていく。全てを満たした瞬間、ミスティックコードが弾け散った。マナ光もそれに合わせて消えていくが、消えた後に残ったのは無ではなかった。
 人型のフォルム。人間の数倍の大きさを持つ金属の身体。間接各部は幾条ものコードが露出し、時折ミスティックコードが発露しては霧散する。両肩、両腕には銃器のマナクラフトを想像させる砲塔が各一門。腰には狙撃銃のマナクラフトをそのまま何倍にもしたような代物が装備されている。

「ゴーレム……なのか?」

 魔法文明の象徴の一つ。政府ですら再現は勿論、発掘されたものの起動すらままならぬ、伝説の兵器。
 それはツヴァイに従う騎士の如く片膝を付き、手を彼女の足元に差し出した。ツヴァイはそれが当然の如く、自然な動作でその手に乗る。
 フェンの知るゴーレムは、過去の惨劇もあいまって禍々しいイメージを喚起するものだったが、今目の前にあるそれは、ある種の神々しさを放っていた。

「どう? 設計、力、そして物質の合作よ」

 ポカンと口を空けたままのフェンに、どうだと言わんばかりにフィーアが肩で小突く。アインスが褒めて褒めてと言わんばかりに、フェンの服の裾を引っ張る。

「すげぇ」

 そんな二人に気付かぬようにフェンは思わず呟く。
 これが稀代の魔女の力。世界を滅びから救うという彼女達の言葉を信用はしていたが、実感がともなわなかった事も確かだった。それが、一瞬で現実味を帯びた。

「じゃ、行ってくるぞ!」
「え?」

 いつの間にか、ゴーレムの肩に乗っていたツヴァイが手を振っている。

「行くってどこに?」

 本来なら聞くまでもない事のはずだった。が、あまりのショックにフェンは頭の中が真っ白になっていた。

「もちろん、奴らを倒しにさ」

 轟、と突風と共にその巨体が腰の高さ程浮かび上がった。そして、砂煙とミスティックコードの尾を引いて、ストームワームの群れに放たれた一本の矢のように突き進む。

「さて、こちらも準備しますか」
「まだ何かするのかよ?!」

 ようやく、我を取り戻したフェンは、今度はフィーアの言葉に目を剥く。
 フィーアは再び両手を合わせながら、流し目でフェンを見る。

「だって、ツヴァイだけに危険な事、させられないでしょ?」

 アインスがフィーアの服をツンツンと引っ張る。

「なに? アイ」
「嘘は良くないよ、フィー」
「………………」

 悩むように目を瞑ったフィーア。そして目を見開き両手を開き、ミスティックコードを展開すると同時に言った。その表情は何かを吹っ切ったようにも見える。

「ツヴァイだけに点数稼がせるもんですか!」
「そーそー。私達だって役に立てるって、フェンお兄ちゃんにアピールしないとね」
「……アイ、もうちょっと、その。遠まわしに言って欲しいの。そういう事は」

 カクッと顔を伏せるフィーア。
 どうやら、生ける天災も彼女達にとっては、自分達をフェンにアピールする材料らしい。
 フィーアのミスティックコードは、今度は足元に広がった。テトラ達を含めた竜車を軽く納める真円。
 フィーアはフェンに向かって薄く微笑む。

「フェン、覚悟は良い?」
「……好きにしてくれ」

 フェンは、どうせ止まるまいと投げやりに言った。その口角は上がっていたが。

「アイ、流して!」
「りょーかい!」

 アインスが両手を真下に振り下ろす。マナ光が地に向かって放たれ、フィーアのミスティックコードの輝きが増す。

「な?!」

 フェンは狼狽の声を上げる。足元のミスティックコードが上昇し、そしてそれと共に自らの足も地を離れたからだ。慌てて周囲を確認すると、フィーア、アインスは勿論の事、竜車すらも、ミスティックコードの描く真円上にある物体が全て浮き上がっていた。
 フィーアは得意げな表情で言った。

「ツヴァイがいなくても、この程度は出来るのよ」

 そして、すかさずアインスが水を差す。

「あたしのマナが必要だけどねー」
「……間違ってないけど。ちょっとぐらい良い気にさせてくれてもいいんじゃないの? アイ」
「自分だけの手柄にしようとするからだよ、フィー」

 一瞬、気落ちした様子のフィーアだったが、すぐに気を取り直したようだ。すでにツヴァイはストームワームの所に辿り着き、砲撃の音がここまで響いてくる。

「あら、いけない。行くわよ」

 ツヴァイのゴーレムの時とは違い、音もなくミスティックコードの真円は、ストームワームに高速で向かった。





 地響き。それは地震でもなんでもなく、ゴーレムの砲撃に頭を砕かれたストームワームの胴体が地に落ちた振動だった。

「生きた天災。なるほどな、言われるだけの事はある」

 ゴーレムの肩に乗るツヴァイは首を失ったストームワームののた打ち回る胴体を見た。ただ、巨大なだけでも脅威なのに、すさまじい生命力。
 こんなものを相手に闘う術など、今の時代にどれほどあるのか。
 二匹、三匹と襲い来る顎をかわしながら、ゴーレムの砲塔が火を噴く。回避行動を取りつつの攻撃になるので命中精度は低下するが、弾切れの心配はない。
 彼女は物質の魔女ツヴァイ。ゴーレムのような複雑かつ巨大なものになれば、フィーアやアインスの助力を必要とするが、砲弾程度の物質化なら造作もないし、その砲弾物質化に必要なマナもゴーレムを造った際の余剰マナが十分にあった。
 唯一つ、ツヴァイに心配ごとがあった。
 それは――。
 煌、と閃光が宙を駆けぬける。ストームワームの一体が、胴体を焼き切られる。

「やっぱり、来たか」

 ツヴァイは残念そうに呟いた。
 視線の先にはミスティックコードの円に乗るフェン達。

「あたしはフィーア達より一緒にいた期間が短いんだから、見せ場くらい、サービスしてくれてもいいと思うんだが。なぁ?」

 ゴーレムに問いかけるが、当然返答はない。

「仕方ないか。あたし達の最後の姿になるかも知れないものな。フェンの記憶に残りたいのは同じか」

 ため息をついて次のターゲットに向かって砲弾を放った。





「当たった、当たったー」

 飛び跳ねて喜ぶアインスに、フィーアは釘を刺す。

「それはいいけど、間違ってもツヴァイに当てちゃだめよ」
「はーい」

 アインスは元気良く返事をすると両掌を重ねるようにして前に突き出す。
 煌、と再び放たれる閃光。まともに見つめると目を焼かれかねない。テトラ達も耐えかねて目を瞑っている。
 力の魔女アインスの熱線、それは容易くストームワームの胴を頭を貫いていく。

「フィー、後何匹いるのー?」
「えーと、たぶん五匹――」
「八匹よ」

 それはその場で聞こえるはずのない声。
 そして、一瞬それに気をとられた為、次に起こった事の対応が遅れた。
 フェン達の空中の足場となっている魔法陣のすぐ近くに、頭部を半分焼かれたストームワームが、鎌首をもたげ、飲み込まんとあぎとを広げていた。

「う、うっそぉー」

 非常事態。だが、一つのため息が、その場にいた全員の耳に入った。
 次の瞬間、ストームワームの頭部が見えざる複数の刃物に切り崩されていく。

「ストームワームは生命力が高いのよ。狙うのは頭。それも確実に破壊しないとダメよ」

 寝癖の残る髪そのままに、気だるそうに彼女はそう言った。

「ライ、目覚めたのね」
「おちおち寝てられないわ。このざまじゃ」

 さらに一体。ドライの手に落ちる。
 こちらの異変に気付いたのか、ツヴァイのゴーレムが近づいて来る。

「さっさとすませましょ。合一するんでしょ?」
「合一?」

 フェンが眉を潜める。
 ドライはそんなフェンの反応を予想していたのか、責めるようにフィーアとアインスを見る。

「例によって、何の説明もしてないんでしょ。それともフェンには無関係だからとでも言うつもり? 言うつもりなの?」

 皮肉気な口ぶりにフィーア達の反論はない。
 フェンが割って入る。

「悪いがそれどころじゃねえだろう?」

 魔法陣の周囲に残ったストームワームが仲間の死骸を越えて鎌首をもたげている。

「確かにね。邪魔者は片付けましょう。話はその後かしら?」

 砲弾が、熱線が、見えざる刃が、残ったストームワームの頭部を全て破壊した。





「合一というのは、簡単に言えば私達四人が稀代の魔女に戻る事よ」

 目を覚ましてしばらく経つのに、気だるそうな態度は変わらずにドライは言った。ただ、その瞳にちらちらと狂気の火が見え隠れしていたが。
 ストームワームを全滅させた後、魔法陣を着地させたフェン達はツヴァイと合流。
 ツヴァイのゴーレムはマナへと戻され、アインスに吸収されてしまった。
 本来なら邪魔者は片付いた以上、ホープへの道のりを阻むものはいないはずだったが、ドライの目覚めにより、大きく予定が変わってしまった。
 現在、竜車はストームワームの死骸から少し離れたところに止め、フェンと魔女達は全員竜車から降りていた。

「つまり、四人が合体するって事か?」
「合体、その表現であっているかは疑問。疑問だわ。私達は本来一人の人間を切り分けた存在だもの
 復元されると言うほうが適切かしら」

 少し考えてフェンは言った。

「お前達の人格はどうなる?」
「さあ? 私は知らない。知らないわ。普通に考えたら、消えるんじゃないかしら?」
「そんな事ないわ!」

 フィーアが耐えられないと割って入る。

「確かに私達は一人に戻る。でも、私達の記憶、想いは全て残るわよ!」

 ドライは冷めた口調で言った。

「ならば、なぜフェンに初めからそう説明しない? 説明しないの?」
「それは……」
「この件に関して正確な知識を持っているのはフィーア。稀代の魔女から知識を受け継いだあなただけ、あなただけよね」

 フェンはフィーアの目を見つめる。

「合一するとお前らの人格はどうなる。全員の人格を持つ事になるのか?」
「……いいえ。それだと多重人格だもの。問題があるわ。稀代の魔女の記憶に私達の経験が加味され、新たな人格が再創生される――」
「……それはお前達が消える。そういう事じゃないのか?」
「それは是とも非とも言えない。元々私達の人格が、稀代の魔女から分かれ――」
「詭弁、詭弁よね」

 ドライが一蹴する。フィーアが抗しようとするが、言葉がないのか口を開いては閉じるを繰り返している。
 ツヴァイはただ成り行きを黙って見守り、アインスはツヴァイにしがみついている。

「別に私はかまわない。かまわないわ。今さら消えようが、消えまいが。でもね」

 ドライの目の狂気の火が強い光を帯び始めた。そしてそこには隠しもしない怒りの色もあった。

「フェンを。ヤットの血を宿すものを欺くというのなら、容赦はしない、しないわ」
「私はただ……」

 フィーアの手が震えていた。
 成り行きにたまりかねてフェンが止めた。

「もういい。ドライ、そこまでにしてくれ」
「……あなたはそれでいいの? フェン。私が目覚めなければ黙って合一していたかも知れない、知れないのよ?」
「正直、いきなりの事で混乱している。時間を置きたい。今日はここで野営する」

 異議は認めない。そんな口調でフェンは言った。





 ドライの姿がいつの間にか消えていた。

 残されたオレは凄く気まずいんだが……。

 残った魔女達もどこかぎくしゃくしていた。

 なんでこんな事になるんだか……。元々はこの先にあるはずのマナクラフトを取りに行くってだけの話だったのに。

 フェンは深くため息をつきたかったが、今はそれすら彼女達を責めるようで我慢した。
 野営の準備をしていたアインスに声をかける。

「なぁ、アインスは知っていたのか?」
「合一の事?」
「ああ」
「うん……。ビーも知っていた。だからストームワームの時、みんな張り切っていたの。今の私達の姿がフェンお兄ちゃんの記憶に残るようにって」
「そうだったのか」

 確かにフィーアまでが妙に張り切っていた。らしくない感じはしていた。

「正直、自分が消えるって良く分からない。でも、経験も記憶も、フェ、フェンお兄ちゃんへの想いも、全て受け継がれる。フィーはそう言っていた」
「フィーアを信じているんだな」
「ああ、そうだ」

 ツヴァイが話に加わる。

「あたし達は稀代の魔女から分け身。元は一人の人間。フィーアを疑う事は自分を疑うに等しい。それにドライがヤットの想いに苦しんだように、稀代の魔女から知識の大半を受け継いだフィーアも、また苦しんだはずなんだ。使命の重さに」

 まだフィーアと会って間もない頃、彼女はこう言った。

『五百年という時は決して短くなかった。その重みをあなたは理解出来る?』

 フェンは頭をかいた。
 ややこしい話は苦手だ。だが、放置すればややこしいで済まなくなるだろう事は、分かっていた。

「フィーアが見当たらないが、どこだ?」
「さっき、ドライを探しにいった」
「……二人して消えるなよ。たくっ。食事の準備をまかせていいか?」
「大丈夫だよー」
「かまわないが、食材はどうする? ドライもいるが……」

 彼女は現在の食料事情に順応出来るだろうか?

「正直あいつに暴れられるとかなわない。山羊の肉があるから使ってくれ。ただ、冷凍保存してはいるが、解凍用のマナクラフトがない。普通にやったら時間がかかるが」
「ああ、大丈夫だ。それくらいならアインスにまかせればいい」
「うん。大丈夫だよ、フェンお兄ちゃん」
「そうか、頼んだ。生の果物類も一緒にあるから、解凍しといてくれ」
「……もしかして、何かの祝い用とかじゃないだろうな?」

 危ぶむツヴァイにフェンは苦笑する。

「旅の終わりの打ち上げ用に使うつもりだったんだよ。図書院に行く前に仕入れておいたんだが。だが、まだ先がありそうだからな。次はもっと上物を仕入れておくから遠慮なく使ってくれ」
「分かった」
「行ってらっしゃーい」

 二人に見送られ、フェンは早足で歩き出した。





 当てがあった訳ではない。
 しかし、足はある方向に自然と向かっていた。
 ストームワーム達の死骸が横たわる場。
 死臭が鼻をつくそこにフィーアがいた。声をかける前に向こうもフェンに気付いた。

「怒った?」

 フィーアは困ったように微笑みながら聞いてくる。たぶん、自分の言っている事が的外れだと分かっているのだろう。

「せめて相談くらいは……して欲しかったな。あんな形では聞きたくなかった、かな」
「だって、言ったらフェンは反対する。ドライが詭弁と言ったけど、その通りだわ。合一の際、私達の人格もデータとして残るけど、そのデータは私ではなく私の残骸だものね」

 フィーアは目を細めた。

「そうね。フェンには話すべきだった。たとえ反対されたとしても。これじゃヤットがやった事と同じだもの」

 そして、フィーアは視線を落とした。

「でも、何から話したらいいのか、分からないわ」
「別に一から十まで話せとは言わないさ。でも、合一は目の前だろ? その事くらいは――」
「その合一だけど、無事出来るかどうか怪しくなってきた。なってきたわ」

 ドライが姿を現した。空間転移を使って突然現れたのだ。

「脅かすな」
「この程度じゃフェンは驚かない。そうでしょ」

 フェンは肩を竦め、そして眉を潜めた。

「で、どういう意味だ。合一に必要なマナクラフトがこの先にあるんだろ?」
「こんなものが見付かった。見付かったわ」

 ドライが掌サイズの棒状のものを投げてよこした。

「マナクラフト?」

 タイプウィンドウを開こうとするが反応しない。仮想タイプウィンドウも開かない。微かにマナ光を発している事から、マナ切れでもない。

 チューニング用工具を使う間接リンクタイプか?

 そして、すぐそばに専門家がいる事を思い出して、フィーアに手渡す。

「フェン。あなたは疑問に思わなかった? ストームワームが留まったままだった事」

 恐らく図書院で知識を得たのだろう。ドライはストームワームの習性を把握しているようだった。

「確かに変だとは思ったが――」
「結論から言えば、あのストームワームは番犬代わりだった、だったのよ」
「番犬? ずいぶんとまたおっかないな」
「そう。そうね。さっき渡したのはストームワームの頭に埋め込まれていたものを取り出したの。群れのリーダーをそれで操作していた。いたのよ。そうよね?」

 最後の言葉はフィーアに向けたものだった。

「十中八九。いえ、まず間違いないわ」
「でしょうね。こんな悪趣味なマナクラフト。そのくせ出来は一級品。他にいないわ、いないわよね」
「何の話をしてるんだ?」
「そのマナクラフトはストームワーム用に調整されているでしょうけど、本来は平民に使われていたものだった、だったのよ」

 平民、それは魔法文明時代にウィザードとその他の人間を分かつ言葉。
 そして、フェンは知っていた。かつて平民を魔法技術の人体実験に使ったウィザードの存在を。

「おい、まさか……」
「ええ」

 フィーアは頷いた。暗澹たる表情で。

「これは黒の魔法使い、チャヤ=サットゥの手によるもの。そして、これがストームワームに使われていたという事は」

 フィーアはまだ見えぬ、かつての故郷の方向を見やった。

「恐らく、この先。ホープが黒の魔法使い、黒の盗賊団の拠点よ」


 第八章 完






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