両手に持ったビニール袋に詰めた荷物をようやく降ろす。
ちょっと買いすぎたようだ。
「まさか特売セールだったなんて…チラシのチェックが甘かったわ」
一息ついて、買ったものを片づけていく。
「冷蔵庫に全部入るかしら」
一抹の不安を感じながらも手は止めない。
「牛肉はここ、レモンは…とりあえず後回し、鮭は…」
ふと手が止まる。
『どうしてこんな所にいるの?』
頭を振って作業に没頭しようとする。
それは理解してはいけない事だから。何故かそう理解していた。
玄関の方から、ただいまの声。
娘が帰ってきた。
「お帰りなさい」
なぜかほっとして、玄関に迎えに行った。