チャーリーさんの花嫁−16page
落下したエリの体を少年が受け取ったのを確認した。
『キミの役目だ』
少年の目が物言わず我輩に語っていた。
当然だ。
これは我輩とエリの物語だ。
決して、悲惨な死を遂げた少女の亡霊が紡ぐ、巻き添えの物語にしてなるものか。
「どうして、そんな状態でまだ動けるの!?」
片腕を噛み砕かれた石膏像が、悲鳴のような声を上げた。
我輩は人骨模型。下半身を切り落とされようが、頭を切り離されようがどうという事はない。
右手で下半身の骨盤を、左手で頭蓋骨を持てばいい。
石膏像が半狂乱で残った片腕を振り回し、我輩の頭蓋骨の半分を砕いたが、そんな事は知ったことか。
頭蓋骨の欠片が飛び散るよりも早く、残ったほうの腕にも我輩は噛み付いた。
「や、やめてっ!」
もはや一片の情もかけるつもりはない。
我輩の頭蓋骨を持つ左手薬指がエリの苦痛を今も伝える。
それを力にかえて、顎に伝える。乾いた音と共に石膏像の腕が落ちる。
「少年よっ! この狂った世界を終わらせるにはどうすればいい?」
「この七不思議の世界と現実を繋いでいたのは『焼却炉の前のおじさん』だった。そして、その七不思議は今『喋る石膏像』と融合している。『喋る石膏像』の物語を壊してしまえば、後は連鎖的さ」
「つまりは」
我輩は右手に力をこめた。下半身を踏ん張り、我が上半身を後ろに振った。
「こやつを壊せば良いのだな」
「その通り」
『喋る石膏像』にこれ以上何も言わせるつもりもない。
勢いをつけて、上半身を石膏像に叩きつけた。
あばら骨が石膏像に突き刺さり、折れ、ばらばらになった背骨は石膏像の欠片と一緒に飛び散った。
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