DF−DarkFlame−-第一章-−4page
「たくっ、あいかわらず残すんだから」
不満の呟きと共に食器を洗う音が聞こえる。
健太郎はリビングの床に直座りし、ソファーを背もたれ代わりにTVの画面をずっと眺めている。
ソファーの座面に放置された手でリモコンを弄び、無感動に液晶画面を眺める。
番組はごく普通のニュースで、最近あった放火事件の続報や、高速道路での玉突き事故が報道されていた。
「はい、終わりっと」
洗い終わった食器を乾燥機の中へ入れた智子は、エプロンを外して健太郎の隣に来て、ソファーに座る。
「いつも、ごめん」
「いいわよ。私が勝手にやってるだけだから」
夕食は健太郎が自宅に戻ってからは智子が作りに来ている。
健太郎の家から彼女の家まで徒歩でも5分とかからない距離にあるので時間的な問題はないし、彼女の両親も、健太郎の事情を知っているからだ。
健太郎と同じようにTVに目を向ける彼女。
「見てるの?」
「ううん。でも、他に見たいのないし」
「あいかわらず、ソファがあるのに座らないのね」
「…うん。何か居心地が悪いから」
「床の方が居心地いいの?」
「どこでも一緒かな? この家に居場所がない気がして」
「あんたの家でしょ。あんたの家なのよ、ここは」
「分かってる。でも、あれ以来なにか違うんだ」
健太郎は手にしていたリモコンの電源スイッチを押した。そして、部屋全体が静かになる。
「家のどこに何があるのかは覚えている。…というよりも知っているって感じ。何かしっくり来ない」
「やっぱり、病院とかで見てもらったほうがいいんじゃ」
「病院なら異常はないって言われたよ。智子も知ってるじゃないか」
「そうだけどね」
智子は諦め気味にため息をついて、健太郎の手からリモコンを取って再びTV電源を入れる。
「何か、見るの?」
「ん? 違うけど。ほら」
番組は先ほどまで見ていたニュースのままだった。
内容は駅前付近のビルにて原因不明の爆発事故が起きたというものだった。
「最近、多い気がしない。こういうの」
「そうかも」
まるで、興味がないように健太郎は言った。
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