DF−DarkFlame−-第一章-−6page






 さて、これからどうするか。
 暗闇の中で彼は腕を組んで自問する。
 思ったよりダメージの回復は早かった。
 それは助かったがなまじ行動可能になってしまうと、ただ時を待つのが苦痛になって来る。
 他のグループのテリトリーにまで進入して来た理由は二つ。
 そのどちらも、手がかりが掴めない。
 そもそもがいまさらな話なのだ。半年前ならいざしらず。
 だからこそ、今回の作戦の指揮は彼の知る化け物の一人が執っているのだ。
 恐らくはかなり強硬に幹部達にねじ込んだのだろう。
 幹部達すらもてあます相手だ。このまま手ぶらで戻ったのでは身の危険すらある。
 が、同時にチャンスでもある。
 ここで、手柄を立てればのし上がれる可能性も大きい。

 ん?

 思索にふけっていた彼の表情が引き締まり、反射的に自らの気配は絶った。
 ここは作りかけビル建設現場。
 それも、周りを覆うシートや足場、鉄骨等の汚れから長期間放置されている現場だろう。
 だからこそ、彼はここに身を潜めていた。
 誰もおらず、誰も来ないと思って。
 しかし、彼のいる位置から遥か下、恐らくは一階部分、コンクリートの床を歩く足音を捕らえた。
 時刻は夜とはいえ、まだ人が出歩いてもおかしくはないが、それは表の道の場合であり、こんな場所にいったい何の用だ?

 (一人か。このビルの関係者? にしてはライトぐらいもっているはず)

 並の人間には見つけるだけ困難な距離と闇の中を、彼は苦もなく侵入者を観察する。
 だが、それはすぐに打ち切られた。
 彼の放つ気配。
 思わず声が漏れた。

「同族かっ」






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