DF−DarkFlame−-第一章-−10page
昔ながらの黒電話風の着信音がさして広くないフロアに響き渡る。
「あちゃ、寝ちゃってたか」
彼女は寝ぼけ眼で携帯電話を手にする。
「はい、藤華興信所──、じゃない。こちら八識。何事?」
まだ頭に眠気が残ってるのかつい、いつもの固定電話の対応をしてしまった。
携帯のディスプレイを見ると、パトロール部隊からだ。
「炎気を感知? 確かね? 場所を特定出来る? あなたと組んでる炎気読み担当はかなり優秀だったはずだけど。うん、そう。ちょっとまって」
片方に携帯をもったまま、空いている手でペンをとりメモ帳に走り書きをしていく。
メモ帳の方をろくに見ずに書いているので読み取れるかどうか怪しげだったが、かまわず次々と書き足していく。
「感知した炎気は両方とも【燈火】のものではない事は間違いないのね? OK あなた達はその場で待機していて頂戴。斬場が近いはずだから向かわせる。私も現地に行くから状況に変化があったら連絡頂戴。え? なぜって【燈火】以外のDFがテリトリー内で争っている状況なんて、慎重に見極める必要があるわ。いえ、もしかしたら、諦めていた手札が手に入る可能性も出てきたかも知れないわ」
一端電話を切って、彼女は身支度を整える。
「おっと、忘れちゃいけない」
彼女は走り書きをしたメモ帳を破りとった。
瞬間、破られたメモ帳は消失した。
そして、床に散る粉々になった灰。
再び彼女は携帯電話をいじり出す。
電話帳から目的の相手を見つけて、通話ボタンを押す。
「八識よ。斬場、今どこら辺にいるか知らないけど、今から言う場所に急行して。ひょっとすると今の状況を覆す一手が手にはいるかもしれないの」
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