DF−DarkFlame−-第一章-−12page
ちょっと手を抜いたか?
彼は眉を潜めた。
二人丸ごと巻き込めると思っていたが、彼の炎術は女の前に立ちふさがった男を焼き包むに留まった。
まぁ、あんなでも同族だしな。
耐性だけは一人前だったのかもしれねぇ。
女の方は黒い炎に包まれた男を見つめて悲鳴を上げている。
足を引きずっているところを見ると、ひねったかなにか故障したのだろう。
悲鳴はまずいな。
とりあえず、あれを狩って。
すぐここを離脱…だな。
彼はすでに次の行動を考えていた。
腕を女の方へ向けて、そして初めて違和感に気付いた。
炎術の手ごたえがない。
炎術で焼いた以上、黒い炎を通して焼いたものの状態が分かるはずなのに。
いや、焼くどころか──
届いていない…だと?
彼は目を見張った。
黒い炎は確かに男を包んでいる。
しかし、中にいる人影はその形を保ったままだ。
しかも、あの弱々しかった炎気は急速に膨らんでいく。
彼の炎術に対抗するように。
否、それを飲み込むように。
「馬鹿なっ、うそだろ」
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