DF−DarkFlame−-第一章-−13page






「けん…たろう?」

 智子にも分かった。健太郎が無事なのが。
 黒い炎の中にあって、その人影が苦しんでいる様子はない。
 そして、それは唐突に起きた。
 黒炎が膨れ上がり、そして四散した。
 そこには男の方へ両腕を突き出した健太郎の姿があった。


「うああああああっ!!」

 男が悲鳴を上げた。
 痛み苦しんでいる。
 まるで、自らが放った黒い炎が己の一部であるかのように。

「てめぇ、謀ってやがったな!」

 男は再度、黒い火球を生み出した。
 今度は先ほどとは比較にならない大きさだ。
 まだ放たれてすらいないのに、その熱気が智子の肌に伝わってくるようだ。

「くたばれっ!」

 男の姿を覆い隠すほどの炎弾が放たれた。






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