DF−DarkFlame−-第一章-−16page






「少し、遅かったか?」
「みたいね」

 ほとんど炭化しつつも、なお黒炎に包まれた男を前にして八識は肩を竦めた。

「読めるか?」
「今? 出来なくもないけど、出来れば炎術が完全に沈静化してからのほうがいいわ。本体に伝達されて面倒な事になるといけないから」
「バレたらまずいのか?」
「さぁ、分からないわ。分からないからうかつに手をだせないの」
「結局、オレはいらなかったんじゃないのか?」
「結果論よ。それに破片だけ読んだけど、昇華こそしてないものの戦闘員としては一級品よ。先にウチのとぶつかってるけど、よくも無事で済んだものだわ」
「【燈火】のメンバーとやりあってるのか?」
「ええ。報告に上がってたわ。発見次第、斬場。あんたを急行させるはずだったの。ウチは戦える手駒がただでさえ少ないから。確実に勝てるあんたをぶつけるつもりだったのに」

 斬場は馬鹿にしたように息を吐いた。

「良かったじゃないか。手間が省けて」
「…まぁそうね。ただ、新たな問題が発生しちゃったけどね」
「誰がこいつを倒したか、か? それこそお前が読めば済む話だろう」
「読んで、さらに問題が複雑化したら? 【紅】の戦闘員が【燈火】のテリトリーで倒された。そして、犯人は【燈火】のメンバーじゃない」
「今の状況を覆す一手って話はどうなった?」
「あの時は急いでいたからあまり深く考えてなかったんだけど」

 おとがいに手をあてて悩ましそうに八識は言った。

「なぜ、半年前でなく今になって? そして、牙翼と刃烈。いずれなのか」
「それこそ、読むしかないだろう。もうそろそろいいだろ」
「そうね」

 八識はため息をついてかかとをぶつけて鳴らした。
 瞬間、彼女の足元から黒い炎が帯状に何本も放たれて、男の身体を包み込んだ。



第一章 完






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