DF−DarkFlame−-第二章-−3page






 灰色のシートを背にして、立ち去ろうとした八識は足を止める。

「帰ったんじゃなかったの?」
「確か命令はビルから出ていけ、だったな」

 両腕を組んで八識を待っていた斬場がそこにいた。
 健太郎達を前にしていた時とは違って、炎気を限界まで抑え込んでいる。

「またあの子達を襲うつもりだったんじゃないでしょうね?」
「まさか、【燈火】の長殿が心配だっただけだ」

 少し拗ねているのか、らしくなく言葉がトゲトゲしい。

「記憶障害起こしてるような子相手に過敏すぎなのよ。確かに炎術はそこそこのようだけど」
「そこそこ、か。今はまだそうだろうがな」
「斬場?」
「炎術をぶつけ合ったんだ、良く分かる。あいつ自身すら気付いていないかもしれないがまだ底じゃない。お前が割って入らなくてもあいつは身を守れたろうよ」
「まさか」
「可能性。時間がたち過ぎてオレはゼロだと思い込んでいたようだが、ここに来て急上昇した訳だ。だがな」

 斬場はいくつもの修羅場を潜り抜けた鋭い眼光で八識を見据える。
 【燈火】の長は確かに八識だ。
 だが、【燈火】最強のDFとして、戦陣の先に常に立ってきたのは斬場だ。

「心しろよ。伏せられたカードはエースかジョーカーか、どちらか分かっていないという事をな」
「忠告、心に留めておくわ」

 【燈火】の長、それに相応しい表情に満足したのか、斬場は背を向けた。

「支部の様子を見てくる」
「私は事務所に戻ってるわ」

 二人はビル建設現場を出たところで分かれた。






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