DF−DarkFlame−-第三章-−4page
『へぇ……、大したもんだ』
感心したような男の声にそちらこそな、と胸の内で呟いた。
元々どこかのグループに属した事はないのでトラブルは日常茶飯事だったが、ここまで出鱈目な炎術を使うDFに出会った事はなかった。
”同族食い”。なるほど、この男の二つ名の通りだ。
『まさか、俺の《捕食》の炎術を食い破るとは思わなかった。昇華してからは負け知らずだったんだぜ、一応』
『まだ、負けてはいないだろう。君のその炎術の属性を考えれば互角ですら勝利に等しい。噂には聞いていたがなんて炎術だ』
『攻撃がこっちに届いてる時点ですでに互角じゃねぇよ。そっちこそ、噂通りだな』
『…ちょっと待て。なんだその噂って言うのは』
『あん?』
『僕は噂になった覚えはない』
『何を言ってんだ。お前が牙翼だろ?』
『確かにそうだが…』
『あちこちのグループを潰して回っている事で有名だぜ? 知らないのか?』
『ちょ、ちょっと待て。なんだそのグループを潰して回っているって言うのは。僕は降りかかる火の粉は払った事はあってもこっちから仕掛けた事はないぞ』
そうだ。僕をそこら粗暴なDFと一緒にしてもらっては困る。
…ただ、少々忘れっぽくてグループの長への挨拶を忘れる事はあるけど。
『…たしか、このまえ【雷陣】を潰したよな?』
『あれはグループに加わるまで帰さないと言われて包囲されたから実力で突破したまでだ』
『【五光】の幹部が全滅したのはいつだったっけ?』
『せ、正当防衛だ。確かにテリトリーに入ってそこのグループの長に挨拶しなかったのは礼儀知らずだったかも知れないが何もグループ全体で攻撃して来る事ないだろう』
『【煌宝】の幹部をぶち殺したのは?』
『一気打ちを申し込んできたのは向こうだ。そ、それに殺すつもりはなかった、それなりに加減はしたんだ。…まさか仮にも幹部を名乗る奴が昇華してすらいなかったなんて誰が思う』
最後の方はしりつぼみになる。
男はクックックと堪えきれない風に声を漏らす。思わずムッとしたのが表情に出たのか、男が片手で制する。
『面白い、実に面白い奴だ。【紅】にもお前みたいな奴がいれば少しは退屈せずに済むんだがなぁ』
『僕はごめんだ。【紅】の刃烈の噂は嫌って程耳にしている。”同族食い”の刃烈』
『簡単に食われる方が悪いのさ。だが、お前ならそんな事はないだろう』
『…正気で言ってるのか?』
『この上なくな…ま、この街にいる間でもじっくり考えてみるんだな。その間は他の連中には手出しはさせねぇよ』
『まるで君が【紅】の長であるかのようだな』
『はっ、つまらねぇ地位に興味はねぇよ。居てくれって言うから居てやってるだけだ。俺の意思が通らないならぶっ潰し食らい尽くすまでさ』
『…なるほどな、どうやら多少は君に興味が出てきたよ、我ながら物好きだ』
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