DF−DarkFlame−-第三章-−8page






 事務所で待機しつつ、【紅】対策に動いているチームや裏の仕事に従事しているメンバーに指示を出していたが、ふと携帯の着信履歴に斬場の名前があるのに気付いた。
 恐らく電話で指示を飛ばしていた時にかけてきたのだろう。
 だいたい内容は予想がつくが、放っておくと勝手に動き出しかねないので、ため息をついて通話ボタンを押した。
「俺だ、奴は見つかったか」
「…まだよ」
「ちっ、ならもう器を替えている可能性が高いな」
「ああ、そっちはもう確定。器を替えた現場は発見したわ」
「何? ならばお前ならそこから何か読みとれるだろう?」
「やったわ。でも、向こうの方が上手だったわ」
「どういう意味だ」
「残留炎気から、瀕死だったのは容易に想像できたけど、その状態で現場付近に炎気を撒き散らしてる。たぶん、炎術で上書きを狙ったのね。私の炎術の詳細をどこまで知っているかは分からないけど、読まれる事を警戒しての行動でしょう。あなたが裏をかかれたのも分かる気がするわ」
「それで、なにか読み取れたか」
「残念ながら現在の器に関する情報は何も。瀕死ってところがミソで、断片的すぎて意味をなさない情報がほとんどだった。下手すれば自らの消滅すらありえる状態なのに敵ながら天晴れって感じよ」
「褒めてどうする。だが、どちらにしろ瀕死なのはかわらんはずだ。どこかで狩りを行うはずだぞ。それも今の状態じゃ、大量に」
「分かってる。今、チーム作って、器を替えた場所を起点として円形の探知網を広げていってる所。表の仕事の連中も、準備が整い次第チームを組ませて参加させるつもりよ」

 電話越しにも戸惑いの気配が感じ取れた。

「表のって、おい。やつらを動かすのか?」
「裏はほいほい休めないでしょ。一度切れたコネと信用を取り戻すのは並大抵の事じゃない。裏の仕事は【燈火】の生命線。表の仕事と違って金目的じゃない」
「大丈夫なのか? 元々戦闘に不向きなんだろう」
「分かってる。だけど、ちょっと残留炎気からかろうじて読めた情報、いえ単語というべきかしら。それのおかげで正直ちょっと焦ってる」
「単語? なんだそれは」
「…樹連」

 八識は伝えるべきか一瞬ためらったが、【燈火】での戦闘面でのトップに伝えない事の不利益を考えて言った。
 斬場からは答えが返ってこない。
 絶句してるのか。なぜ、倒し損ねたと自分を責めているのか。

「とにかく斬場。あなたは休んでて。あくまで単語として情報を拾い上げただけだから、今回の【紅】とのいざこざに無関係である可能性も否定出来ないから。そして、万が一なんらかの係わり合いがあるのなら、あなたの力が必要になる。かつて”同族狩り”と呼ばれ恐れられたあなたの力がね。必要なら裏の仕事を回すから直接あっちに連絡とって頂戴。連中には私から連絡を入れておく。後、新たな情報が入り次第、必ず一報入れるわ」
「裏の仕事は必要ない。強がりで言っている訳じゃない。樹連と聞いてやせ我慢などできんからな。後は自然治癒で十分な状態だ。情報は必ずいれてくれ」
「ええ、勿論よ」
「それから…”同族狩り”はやめてくれ。あいつを思いだす」
「悪かったわ。ん? 別の電話が着信してるわ。切るわよ」
「ああ」

 八識は一端電話をおいてため息をつき直に携帯の着信ボタンを押した。

「はい、八識。どう?」






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