DF−DarkFlame−-第四章-−19page
『どうして僕達は器を必要としているのだろう?』
これはいつだったのか、どこだったのか。
ただ、今となってははっきり分る。
これは夢じゃない。これはただの情報、ただの記憶。
損傷した自分が復元される時に自己の正常性を無意識に分析しているのだろう。
『僕達は奪う事でしか生きられない』
当然だ、そのように生まれたのだから。
でも、それは…
『奪うだけなのは奴等も同じ事だぜ。結局生きるという事は奪う事なんだろ。俺達は奴等を、奴等は自分達以外の命を糧とする。そうだろ?』
『それじゃ、僕達は彼等とは永遠に共存出来ない』
『共存しているじゃねぇか。狩るモノ、狩られるモノの違いはあってもな』
正しい意見だ。そして間違った意見だ。
対立する感情は確かにあった。
『【燈火】というサイドを知っているか?』
『…ああ。何を考えている、牙翼。下らない事を考えているんじゃないだろうな?』
『僕は…』
『いいか、言っておくぞ。【燈火】だろうがどこだろうが、結局のところ奪う事でしか俺達は存在できねぇんだ。奪わないで済む方法なんててめぇが消えるしかねぇんだよっ。何を遠慮する必要がある? 奴等は牛や豚を食らう時に躊躇うのか? 後悔するのか? 【燈火】のような獲物を選別するなんて真似は偽善って奴だ』
反論は出来ない。出来ないはずだ。
頭では分っていたはずだ、お互いに。
『もうこの器は限界に来ている。近いうちに替えなければならない』
『…替えればいいだろ? 何の問題もない』
『そうだな…、何の問題もないんだ…』
そう、問題はない。
ただ感情がついていかなくなっていた。それだけの事。
この時に、二人の溝を埋める事が出来たのならあるいはあの日の決裂はなかったのだろうか?
後悔はいつだって取り返しがつかなくなってから訪れる。
© 2013 覚書(赤砂多菜) All right reserved