DF−DarkFlame−-第七章-−2page






 智子の亡骸を前に健太郎は立ち尽くしたままだった。
 懺悔の言葉さえ思いつかない。
 なぜなら彼女は赦さないと言った。
 そんな彼女になんと言葉を送れば良いのか。
 身体に刺さったままの破片等を取り除いてやりたかったが、うかつにやるとさらに傷口を広げてしまいかねず、結局何も出来ないままだった。
 かつて、智子が生きていた事を示す魂の残り火もあと少しで消える。

「せめて…」

 健太郎の脇に炎術の《魔獣》が具現した

「せめて、受け入れさせて。智子が僕に対して抱いていた憎しみも、前畑健太郎を失った苦痛も」

 具現したはずの魔獣の姿が崩れていく。
 黒い粒子状へと変化したそれは智子の亡骸を包み込んでいく。

「永遠の呪いとして、僕を傷つけて」

 完全に黒い粒子が智子を包み込んだ後、健太郎はかすれた声で囁いた。

「食い尽くせ」






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