二人を結ぶ赤い有刺鉄線 第一章 Missing−第06話
週末まで亜矢に避けられ続け、結局修平に謝る機会はなかった。
といっても、何を謝ればいいのかと言われると頭を抱えるしかなかったが。
で、週末当日。
デート場所を指定したのは美月だった
「遊園地ってベタ過ぎないか?」
「いいじゃない、楽しければ」
心から楽しそうに言う。
フリなんて口実で、実は遊びに来たかっただけんなんじゃないのか? とすら思ってしまう。
そして、楽しそうな美月の顔を見て、やはり誕生日パーティを楽しみにしていた亜矢の顔が重なってしまった。
悪かったな、亜矢。
修平はせめてものお詫びにと貯金をはたいて買ったプレゼントを日時着指定の宅配で贈っておいた。少しでも喜んでくれるといいけど。
「どうしたの? 修平君?」
美月が修平の顔を覗き込む。
「な、なんでもないよ」
「なんでもないって顔じゃなかったけど、まぁそれはおいといて。これ見て」
「コンパクト?」
それはコンパクトミラーだ。
そして言われた通り覗き込む。
美月の意図は分かった。
加太だ。ここまでついてきていたのだ。
「完全にストーカーだな」
「まったくよ。家の前までついて来る事もしょっちゅうよ」
「おいおいおい。益々洒落になってないぞ」
「わかるでしょ、私が強引に付き合ってって言った訳」
「……まぁな。仕方ない。せいぜい、楽しんでいる事を見せ付けてやるとするか」
「賛成っ! 分かってきたじゃない」
美月は修平をひっぱって、乗り物へと向かった。
「ジェットコースターだけはやめてくれよ、苦手なんだよ」
「えー。面白いのに、スリルがあって」
「俺は日常にスリルは求めてないんだよ」
むしろ、平穏を望んでいる修平だが、それはしばらく遠ざかりそうだ。
「じゃ、ここで」
「あ、送ってくよ」
遊園地からの帰り道、分かれようとした美月を修平は止めた。
「もしかしたら、まだ加太が付いて来てるかもしれないだろ」
「いいの?」
「ん? どうしてだよ?」
「今日、亜矢ちゃんと何かあったんでしょ、ほんとは?」
「よく分かるな」
「だって顔に書いてあるもの。分かり易すぎ、修平君」
「今更遅いさ。本当は今日あいつの誕生日パーティーに行く約束してたんだよ」
「ちょっと、なんでそれ言わないのよ」
「言ってどうするよ。
どっちにしろ亜矢の機嫌を損ねちまってるしな。
まぁ、プレゼントだけは送っておいたから、それの効果に期待するさ」
「……もしかして、亜矢ちゃんって、修平君の事が好きなの?」
「さぁ? 聞いた事ないし、告白とかそれらしい言葉もない。
小学校からずっと一緒だからな、お互いいまさらって気もあるんだろうな。
兄妹ってほうがしっくりくる」
「そう……、そういう関係もありなのかな?」
美月の返事は少し疑問形だった。
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