「おせーぞっ、修平。30分も待ったぞ」
「まだ、待ち合わせ時間30分前だろっ」
深夜、二人は街の外れで合流した。
集合場所は健二が指定したのだ。
「で、確認して欲しいものってなんだ?」
「ああ、待て。場所を変えるから」
言われて黙って健二の後ろについていく。
進むにつれてどんどん寂れていくようだ。
そして、老朽化した廃倉庫群の端で健二が足を止める。
「こんなところに何があるんだ?」
「どうやら予定より早かったみたいやな、結果運よく時間ドンピシャか」
健二はいつの間にか取り出した双眼鏡を覗いている。
状況がわからないながらも、双眼鏡の先を追っていけば、一つだけ灯りがついて手前に車が止めてある倉庫があった。
その倉庫から人が出てくる。
そして、微かに聞こえてくる声に覚えがあった。懐かしいとすら思える声。
思わず駆け出そうとして、健二に頭を押さえつけられた。
「今はやめとけや、シャレならん奴らやからな」
そして、修平に双眼鏡を渡す。
「確認して欲しいもんはこれや。間違いがないかどうか見てくれや」
言われるまでもない。
双眼鏡を覗くと、倉庫から出てきた人間が次々車に乗り込んでいく。
そして、
「亜矢……」
倉庫の灯りと車のライトの両方に照らし出されているのは間違いなく亜矢だった。
そのまま車の中に乗り込んでいく。
再び駆け出そうしたが、がっちりと健二に腕をつかまれていた。
「さっきも言うたけどシャレならん連中や。下手したら命ないんやぞ」
「そんな連中と一緒にいるなら、なおさら助けに行かないと」
修平の言葉に健二は沈痛そうに言った。
「助けなんて必要ないねんや。できれば人違いである事を願ってたんやけど。
やっぱ亜矢ちゃんやったんか、あれ」
倉庫の灯りは消え、車は闇夜に消えていった。
「どういう事だ。ちゃんと説明しろよ健二」
思わず健二の胸倉を掴む。
それを外さず健二は修平とは目を合わせずに言った。
「さっきまであそこでドラッグパーティーやっとったんや。
まぁ、あくまでもろた情報が正しければの話なんやけどな」
「ドラッグ……パーティー?」
「ぶっちゃけて言ってしまえばドラッグキメての乱交パーティーや。
売人が見込み客をドラッグに引き込む為や、身内へのご褒美として時々やってるらしいわ」
健二の胸倉から自然と修平の手が外れた。
ドラッグ?
乱交?
絶望的な表情で健二を見るが、彼は残念そうに首を振った。
「あそこにいるのはお前の知ってる亜矢ちゃんちゃうんや。もう堕ちるとこまで落ちてもうたんや」
第二章 完