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あおいうた−第二章 白と黒 第05話






 いまだ朦朧とする意識。
 手首の痛みがかろうじて蒼一を現実にしがみつかせた。

 ここはどこだ?

 頭が痛む、視界が霞む。それでも懸命に状況を把握しようとしていた。
 どうやらどこかホテルのようだ。ソファに寝かされている。
 手が動かない。手首が痛いのは後ろ手に何かで縛られているからだ。
 手だけじゃない、足首も同様に縛られている。
 そこまで把握して、ようやく自分の身に何が起きたか。いや、起きつつあるか把握でき始めた。

「よお、蒼一。目が覚めたようだな」
「白仁。何の真似だ」
「何の真似? ちょっとした手段だ」
「何を言ってる。犯罪だぞ、これは」
「はは、こうでもしなきゃ、蒼一をつれてこれなかっただろ」

 寒気が走った。
 彼の表情に何の罪悪感も感じない。思い返せば3年前の別れ話の時もそうだった。頬を切った時でさえ、その顔には困ったような笑顔があった。
 こいつは良縁とは違う。
 明るいんじゃない。負がまったくないんだ。
 そのアンバランスな心を持つ彼の顔が目の前に迫る。

「とにかく、これを外せ」
「だめだよ、外したら蒼一は逃げるだろ。それに」

 白仁の手がズボンの上から蒼一のものに触れた。そして、それを何度かさする。

「や、やめろ」
「何言ってる。たったこれだけで、もう身体は反応してるじゃないか」

 すでに着ていたブルゾンは脱がされていた。セーター、ワイシャツ、インナーシャツをまとめてめくり上げられる。

「ほら、こっちもたってる」

 胸の突起の片方に歯をたてられ、もう片方を指で嬲られる。
 蒼一は歯を食いしばる。そうでもしないと負けてしまいそうだったからだ。だけど、それは勝ちという概念のない戦いだった。ただ、耐える事しかできない。そして、相手は3年以上前とはいえ、数え切れないほど身体を合わせた相手。快感を身体に刻み込んだ相手。
 白仁の手が蒼一のズボンのベルトを外す。
 必死に彼の手の内から逃げ出そうとするが手足を縛られた状態で、それが叶うはずもなく。
 ズボンをずりさげられ、下着もめくり降ろされ、蒼一のものがあらわになる。それは蒼一の心に反して快楽をもとめ起立し震えていた。
 羞恥心から蒼一は思わず顔を背けた。
 だが、白仁は容赦なく手を蒼一のものに伸ばし包み込み、擦り上げる。

「っ!」
「がまんするなよ、蒼一。前みたいな声を聞かせて」

 蒼一のものを握る手にさらに力をこめる。

「や、やめろ。や……めて、白仁」
「やめる? こんなに感じてるのに?」

 それまで胸を責めていた手が、蒼一のものへとおりる。そして、いまだ擦り上げられている蒼一のものの先に分泌された汁を掌ですくうように塗りつける。
 それを蒼一の目の前で、何度も握り開いた。その度に掌と指の間を白い糸を引く。
 蒼一が顔を背けようとすると、それを許さないかのようにさらに蒼一のものを責める手が加速する。

「や、だぁ。りょ……えん」

 蒼一が身体を震わせた。頬を涙が伝う。達した、達してしまった。良縁以外の手で。
 屈辱と羞恥、その両方に頬を赤くさせるが、そんな蒼一にはおかまいなしに白仁もベルトを外す。

「まだまだ、これからだからな、蒼一。3年の間に忘れたものを思い出させてやるからさ」

 白仁の起立したものを見て、蒼一は絶望に囚われた。





 マンションのドアを開けようとすると、固い反応が帰ってきた。

「あれ? 鍵かかってる。蒼一まだ帰ってないんかな?」

 キーホルダーから鍵を取り出しながら良縁は首を捻った

「出かける言うてたけど、すぐ戻るって言うたよな……」

 だが、蒼一は昼をすぎ、夕方になっても帰って来なかった。





 どこへ行けばいいんだろう。
 夜空の下、良縁のマンション前で蒼一は立ち尽くしていた。
 今、蒼一が着ているのは白仁のコートだった。

「今夜は冷えるからね」

 そう言ってなかば無理矢理着せられた。
 良縁になんて説明すればいい?
 今も心配しているはずだ。
 行為中、何度も鳴った『オールグリーン・オールブルー』の着メロ。
 ポケットに入れていたブルゾンごと取り上げられてしまったので、ここまで何の連絡も入れられずじまいで。
 でも、何を言えばいい?
 白仁に犯されて、いいように弄ばれ、よがり狂ってましたって?

 いやだ、いやだ、いやだ。
 良縁はやさしい。きっと僕を責めない。
 だけど、良縁の真っ直ぐさに僕は耐えられない。

 ふと右手で左手首を触れる。
 青と緑のストライプ模様のリストバンド。
 その下にあるのは……。

 そうだ。良縁に知られるくらいなら、いっその事――

「蒼一!!」

 意識が暗闇から現実に引き戻される。
 見上げれば玄関のドアを開けてこちらを見下ろしている良縁がいた。
 思わず蒼一は駆け出した。マンションから離れるように。
 
「ちょ、なんで逃げっ」

 考えなんてなかった。ただ、良縁につかまってしまえば終わりだ、そう思ってしまった。
 だが、元々身体を鍛えていた良縁と蒼一では体力に差がありすぎる。マンションの階段を降りるハンデがついてなお、彼の手は蒼一の左手首をつかんでいた。リストバンドごと。
「どこいくんですか。蒼一が帰る場所は俺んところでしょ」

 蒼一は良縁を見上げ、ただ涙を流す事しかできなかった。






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