過ぎた願い−06page
「食った食った」
腹をさすりながら一息つく。
「あれだけあったのに全部なくなっちゃったね」
空になった発砲スチロール製の容器を片づけながら楽しそうに呟く。
「全部におかずいっぱい詰めておいたのに」
「ほっとけ。俺はよく食べるんだ」
「別に悪いって言ってないよ」
ビニール袋にまとめた容器や紙コップを放り込む。端を縛ってひとまずおいて次に地面にひいてあったビニールシートを片づける。
「あれ?」
彩樹は視界からゴミを入れたビニール袋が消えた事に気付いて手を止めた。
「捨ててくるぞ」
ゴミ袋は英二が持っていた。
「クズかごのある場所分かる? 結構距離あるよ」
「向こうだったよな確か」
英二はうろ覚えな記憶を頼りに指差す。
「うん、そうそう。ごめんね」
「もっとあちこちにあればいいんだけどな」
「あまり人こないからね、ここ」
「もったいない話だな。こんなに綺麗なのにな」
呟きながらゴミ袋を持って歩きだす。
「私はその方が嬉しいけどね」
小さく呟いたそれは英二の耳に届かなかった。
「だって、私は英二だけに見て欲しいから」
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