チャーリーさんの花嫁−14page
焼けたゴミを掻き分け、駆け上り。
倒れていたエリを抱きかかえる。
「エリ。しっかりしろ。我輩だ、チャーリーだ。助けにきたぞ」
「あはっ。本当にチャーリーさんだ。そんな声だったんだね。大丈夫、チャーリーさんが…来てくれたから…」
何が大丈夫なものか。
アキも酷かったが、エリはそれに輪をかけている。
あのきれいだった金の髪がボロボロに焼け焦げて、服も半分以上焼けて火傷だらけだ。
さっき喋ったのも最後の力を振り絞ったのか意識を失っている。
ええい、こんなところにいつまでもおいておけるかっ。
我輩は今入ってきた戸から出ようとして愕然とした。
ない!?
ゴミの山をおりて鉄の壁の戸があったはずの場所を手でなぞるが、戸の感触がまったくない。
そんなバカなっ。
一刻も早くエリをここから出して、あの少年のところへ連れていかねばならないというのに!?
『チャーリーさん。なにやってるの。余計な事しないで下さい』
どこにあるのか、スピーカーからの声。
『真夜中の放送委員』か。
「やかましいっ! 我輩達を即刻ここからだせっ」
『だめだめ。チャーリーさんだってようやく動けるようになったんでしょ? またただの模型に戻ってもいいの?』
…なに?
「どういう意味だ」
『どういう意味も、そうやって動ける事自体が普通じゃないでしょ。この七不思議の世界でだからこそ、そうやって動ける。私もこうやって喋れる。でも、まだこの世界は不完全。まだ、七不思議が完成してないから、あのおかしな刀をもった子供に邪魔をされる。一刻も早く完成させないと』
「七不思議の完成…か。確か『焼却炉の前のおじさん』によって止めようとした生徒は”焼き殺される”だったな」
『そうそう、その子はまだ生きてるじゃない。さっさと死んでもらわないとさ』
「ごめんこうむる!!」
我輩は右腕でエリを抱え、左手で拳をつくって壁を殴りつけた。
先程よりも壁が熱くなっている。
そして、拳の先端にやわらかい感触がかえってくる。
…恐らく、熱で溶け始めているのだろう。
「我輩はチャーリー! 『チャーリーさんの花嫁』は花嫁を連れて行くことで完成するだろう! さっさとここを空けないか」
「冗談でしょう? 私は誰も助けてくれなかった。なのになんでその子は助かるの?」
「!?」
真後ろから声がしたかと思うと、私の体が突然落下した。
エリの体を離すまいと両腕で抱え込んだため背中から、地面に叩きつけられた。
そして、視界に入ったのは立ったままの我輩の下半身。そして、巨大なパレットナイフを持った人影。
ここは美術室。なるほど、奴が我輩の体を上下に切り分けたというわけか。
「たしか、ここの七不思議は『喋る石膏像』だったはずだが」
上半身のみの石膏像は宙を浮いたまま、パレットナイフで立ったままだった我輩の下半身を叩き払った。
「余計な事しないでよ。その子も誰にも助けられないで死んでいくのよ。私みたいに」
「…私みたいに? そうか、貴様。現実におきた事件の」
「そう。『チャーリーさんの花嫁』とかどうでもいいのよ。私が味わったのと同じ苦しみで七不思議が完成して、初めてこの七不思議の世界も完成するのよ。理不尽が理不尽ではない不思議が当たり前の永遠の世界。どう? 素敵じゃない?」
「貴様の境遇は知っている。同情もしよう。だが、なぜエリが同じ目にあわなければならんのだっ」
「なぜ? 今言ったじゃない。理不尽が理不尽ではないって。なぜというなら、私はなぜあんな目にあったの? 私には助けなど来なかったのになぜこの子は助かるの? 理由なんて意味がない」
石膏像が、エリへと手を伸ばす。
離すまいと私はエリの体にしがみついたが、奴はパレットナイフを振り上げた。
「おとなしくそこで見てなさいよ。この七不思議の世界が完成したらあなたも永遠になれるのよ。悪い話じゃないでしょ」
視界にはエリを抱えた石膏像、そしてだらしなく両手が落ちた我輩の上半身。
首を切り落とされた…。
奴は再び焼けたゴミの丘を登っていく。エリをその頂に置くために。
させるものか。
我輩の七不思議はまだ終わっていない!
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