カミキリバサミ−10page






 玄関には鍵がかかっていた。
 まぁ、時間も時間だ。
 財布から鍵を取り出してドアを開ける。
 入ってから施錠して、階段をあがっていく。
 と、登りきったところに千里が立ちはだかっていた。

「な、なんだよ」
「それ、どうしたの?」

 千里が指差すまでもない。
 真っ二つになった木刀だ。

「なんでもないよ。派手なデコトラの飾りに引っ掛けられてこのザマさ」
「うそっ。カミキリバサミにやられたんでしょう?!」
「あいにく、カミキリバサミさんには会えずじまいでしたよ、と」

 千里を押しのけて自室に入る。
 ドアをどんどんと何回か叩く音が聞こえたが、諦めたのか足音が会談を下っていく。
 一息ついて木刀を部屋の隅へ放る。

「あきらめろって言われてもなぁ」

 いや、実際のところあれを倒せる方法が思いつかない。
 それこそ、ゲームの聖剣やら、神槍やらあればともかく、現実にそんなものはない。

「ゲームオーバーか?」

 少年の言う事が正しいのかも知れない。
 邪魔をしなければ、あいつは髪を切るだけだ。
 そう、13人の髪を切って終わり。

「って、それで終わりじゃないだろっ」

 噂には続きがあったはずだ。
 そう、髪を切られた女性は呪われるのだ。
 呪いの具体的な内容までは分からないが。

「くそっ。なんで聞いておかなかったんだ」

 恐らくあの少年は知っているはずだ。

「ちっ、ゲームオーバーにはまだ早いみたいだな」






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