カミキリバサミ−11page






 翌日、誠はホームセンターに足を運んだ。
 木刀のかわりになるものを探すためだ。
 正直、あのバケモノに通用するものがあるとは思えなかったが、さすがに何も無しというのは心細かった。
 工事現場で使われる誘導灯を手に取った。

「ライトセーバーってやってノってくれるヤツじゃなさそうだしな」

 元の位置に戻して、工具コーナーへと向かった。
 一番、使えそうなものが手に入りそうだったからだ。
 通用するかどうかは別として。
 結局、ハンマー、鋸、大型の錐等から選んだのは、持ち歩きやすさ、扱いやすさを考慮してバールにした。
 ホームセンターの帰りに街によって街路樹の縁に座って休憩した。
 夏の日差しを枝葉が遮り、心地よかった。

「さて、選択は正しかったのか?」

 ビニール袋から買ったものを取り出し、パッケージを破って中身を手にする。
 バールである。
 木刀よりもはるかにリーチは短いがさすがにこれはハサミで切れないだろう。
 改めて手にすると重量感があった。

「これも切られると何で対抗すりゃいいんだろうな。というか、例え切られなくてもダメージ与えられるのか」

 両手で持ってじっと見つめる。
 先端の尖りがはたして通用するだろうか。
 木刀で殴った時のあの感触、突き刺さるイメージが思い浮かばない。
 無心にバールを眺めていると、ポンと肩を叩かれた。

「?」

 てっきり金髪先生あたりだと思ったが、そこにいたのはスーツを着た小太りの中年男性だった。

「キミ、そんなものをこんなところでじっと見てるとおまわりさんに捕まるよ」

 もっともな話である。慌てて持ってきたバッグに詰め込んだ。

「隣いいかな?」

 そういう男性はさっきから汗をしきりにハンカチで拭いている。
 粗暴なのを自他共に認めている誠だが、わざわざ空いているスペースに断りを入れてくるような礼儀正しい人間を追い出すほど、根性は捻じ曲がっていないつもりだ。

「どうぞ」
「ありがとう。やー涼しい。クーラーなんかよりよっぽどきもちいいよ」

 昼間からこんなところで休憩となるとこの男性は営業マンなんだろうか?
 温和そうな雰囲気をかもしだしているが、何かを売り込みしてる姿が想像できないタイプだ。






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